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ほんほん その1

おすすめ!BOOK

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"警官嫌い"

エド・マクベイン
井上委一夫:訳
ハヤカワミステリー文庫1976年4月
 米国南部の、常に湿気ったような重い空気の中で、危険と隣り合わせに生きている警官たちの生き様を描いているが、 その「重い空気」の描写も素晴らしいし、男たち、女たちの描写も素晴らしい。
 有名な「87分署シリーズ」の第1巻であることも、わたくしめの好きなスウェーデンの「マルティンベックシリーズ」の元になったことも、後書きを読んで知ったが、 各界に影響を与えたその粘っこくて微妙な描写は、一見の価値有り!
 

"三たびの海峡"

帚木蓬生新潮社1992年4月
新潮文庫1995年8月
 戦争末期に朝鮮半島から福岡の炭坑に強制連行された「私」は、戦後対馬海峡を隔てただけの釜山で財をなしたが、 その福岡にいた時代の話は子供たちに語ることも、自身振り返ることもなかった。それが振り返るきっかけが出来てしまい、「3度めの海峡」をわたることとなったが、 それは過去の自身との対話、そして色々あった人たちとの対面することになる。

 どこまで事実か分からないが(最後の「コールマイン・パーク」などは、実際どこの村にも存在しない)、ただ忠実に取材をされていると言うのがよく分かる丁寧な作品で、 最近の対日感情にあるような、「だから日本はイカンのだ!!」と直接語るわけでなく、日韓の長く不遇な時代を着実に語っている。
 

"ホワイトアウト"*

真保裕一新潮社1995年9月
新潮文庫1998年9月
 織田裕二主演で映画化された作品だけど、そんなことにはまったく関係なくストーリーの筋立てが見事!勝手に目が吸い寄せられて、3日で読み終えてしまった。
ストーリーは、まぁ、映画と同じようなんだけれど、笠原の役割とか、富樫の最後の台詞の重みとか、あの映画だけではよく分からなかった点がよく分かったし、映画ではフジテレビ制作と言うことで 無理矢理新潟のテレビ局が出てきたりだったのもないし、とにっかく、面白い!クリフハンガーなんて目じゃないくらいの面白さ!
 それに、現場のダムや、冬山のことが、余すことなく書かれていて、本当に読んでいる自分までそこにいて、登場人物と一緒に行動しているような気がする一冊でした。
 

"道頓堀川"

宮本輝角川文庫1983年5月
 戦後すぐから混乱期を抜け出したぐらいの大阪”ミナミ”の、道頓堀川端の喫茶店のマスターを中心とした、様々な人間模様を、ドヤドヤした”ミナミ”の街並みと共に描いている。
 色気も勝負っ気もたっぷりな作品なのに、「おとなのよゆう」と言うか、登場人物にぎらぎらしたことを感じない、さらっとしたきれいな作品で、読んでいても何となく穏やかに引き込まれてしまった。
 一応、作者の自伝っぽい作品らしいけど。

"ドイツの犬はなぜ幸せか"


犬の権利、人の権利
グレーフェ或子
(「あやこ」は本当はもっと難しい字)
中公文庫2000年8月
 「いぬと子供はドイツ人に育てさせろ」という言葉があるらしい。その言葉が本当かどうかはともかく、犬を無法図にいい加減に育てるのではなく、犬は家族の一員のとして、 そしてなにより「犬として」、社会の一員として立派に育てる必要があると言う本。
 そして、ドイツの社会が人間にも犬にも、ともに尊厳を持って生きることが出来るという社会である、というのがよく分かった。

"旅人"

湯川秀樹角川文庫1960年1月
 ノーベル賞受賞者である湯川博士の半生を書いた自伝。明治初期の、自信の父親(地質学者だったらしい)の話から始め、色々な自身の話を余すことなく書いてあり、 学者とは斯くあるものかと、面白く読ませてもらいました。
 学者先生の割には文章も上手で思わず読みたくなる筆致だし(幼い頃からの読書好きが高じたのかしら)、いわゆるノーベル賞に関わる難しい部分はちゃんとすっ飛ばしてくれるし、 書籍が溜まるたびに引っ越しをする父親の話など、面白くも読ませて頂きました。
 

"鬼龍院花子の生涯"

宮尾登美子文藝春秋社1980年1月
文春文庫1982年6月
 元々大阪で任侠道をしていて、その後地元土佐に帰ってきた鬼龍院政五郎(略して鬼政)が地元で任侠道の一大勢力を誇ったところから、鬼政・娘花子が没し、名目上も実際も没落していくまでを、やむ終えず鬼政の養子となった松恵の目を通して描いている。
山口組や吉本興業などの話も出てきたり、戦前の「その筋」の話がてんこ盛りであるが、作者の筆の力によって見事に描かれている。
 

"ど田舎警察のミズ署長はかなりの凄腕さ"

ジョーン・ヘス/中井京子訳集英社文庫1998年8月
 原題は「Madness in Maggody」、このどうしようもない日本語題にはあきれてモノが言えないが、そんなことにはお構いなく、米国の中西部のド田舎(人口755人らしい)に起きたちょっとした事件を面白おかしく、 でもちゃんと推理もしていて(どこぞの作家の書く推理小説のように、場当たり的に、読者を小馬鹿にした推理でなく、ちゃんと理にかなった推理ね)、破天荒で面白かった。 シリーズ物であるらしいけど、3作目であるこの本だけを読んでも、この田舎町の情景や人物像もよく分かったし、古本屋で100円で買った割には結構楽しめました。
 

"3001年終局への旅"

アーサー・C・クラーク*早川書房1997年7月
 例の「2001年」「2010年」「2061年」と続いてきた「宇宙の旅」(Space Odyssey)シリーズの一応の最終巻。 訳者後書きにも「来年は80歳だからね」と、この続きはまず無いと思わせるように書かれているが、どうもこの終わりは、次回作を意識して終わっているように思えてならない。
それはともかく、「2001年」から「2061年」まで登場したチャンドラー博士はさすがにいなくなり、今回はあの「2001年」で宇宙空間に投げ出されて漂っていた副長フランク・プールが主役となり、浦島状態での地球(圏)生活と 「2061年」で登場したあの星のモノリスに吸い込まれたボーマンとHALとの会話などがメインになっている。

"おろしや国酔夢譚"

井上靖徳間書店1991年12月
(文春文庫)
 ずっと本棚に置いたまま今まで途中で挫折しまくった1冊。幕末伊勢の白子(鈴鹿サーキットの際)から江戸へ向かった千石船が嵐で流され、アリューシャン列島に漂着、そこでロシア人(当時は露西亜領)に保護され、 日本に帰るにも手だてはなく、カムチャッカ半島からオホーツク、シベリア横断と死ぬような思いで(途中仲間の半数以上は亡くなっている)露西亜を横断し、何とか帰国する手だてが無いのかと帝都ペテルブルグに女王を訪ねるに至る、 というとてつもない大紀行を図らずも成し遂げてしまった男大黒屋光太夫についての歴史小説。但し一番気になったのは、極寒のシベリアでの死にそうなところよりも、 帰国後函館から松前まで3日も掛けて「大名行列」が進んでいったことであろうか。

"シベリア追跡"

椎名誠集英社1991年3月
(小学館1987年12月)
 ↑の大黒屋光太夫の一大紀行を200年後の1987年に追跡した、「あやしい探検隊」のノリの紀行文。未だ「冷戦」と言う言葉があった頃の極寒のアリューシャン列島、シベリア横断も凄いが、 旧ソ連のガチガチ官僚体質が見て取れて面白い本でもある。
(昔読んだはずなのに、ほとんど覚えていなかった。。。。)

"世界でいちばん愛される絵本たち"
人気作家30人のインタビュー集

白泉社2000年12月
 ムーミン・木を植えた男・アンナの赤いコート・はらぺこあおむし・わすれられないおくりもの・メイシー・スノーマン・バーバパパ・ミッフィー・しろくまくん(ラルス)・あおくんときいろちゃん等、 誰もが知っている絵本作家のインタビュー記事を集めた1冊。アノ本の意外な素顔に絶対出会える。月間MOEに連載していたのをまとめたもの。

"ぼんぼん"

今江祥智
(長新太:絵)
理論社197?年?月
 理論社の「少年少女達へ」シリーズの1冊だが、少年の頃のわたくしめだったら絶対読めなかっただろう、大作。大阪のぼんぼん(金持ちの息子)兄弟の成長記だけど、ひたひたと押し寄せる戦争の波。 子供向きと言うことで都合がいいときに佐脇さんが出てきたりっていうのも有るが、父の死、戦争による色々な物がなくなっていく様を見事に描いていると思う。少なくとも、嘘しか書かない「少年H」よりは、百万倍ましだと思う。

"フーミンのお母さんを楽しむ本"

柴門ふみ*PHP研究所1991年11月
 かの有名な「東京ラブストーリー」等の著者であり、またかの有名な「課長島耕作」等で有名な弘兼憲史氏の妻でもある彼女の、育児実演書とでも言うべき本。「こうすればいい」と言う育児書でなく、 等身大の子育てをした著者の実生活そのものズバリを描いているので、ウンウンとうなずけるし、子育てで悩んだいてもあほらしくなる。 エッセイであるが、当然漫画も散りばめられていてすごく読みやすい。

すると彼らは新しい歌をうたった
"日韓唱歌の源流"

安田寛*音楽之友社1999年9月
 一部「朝鮮半島起源説」も流れた、いわゆる演歌や大衆歌、鼓舞するような軍歌や革命歌というのは、元々明治のお雇い外国人達や宣教師達が持ち込んだ賛美歌またはそれらに類推する音楽から発生したものであり、 その賛美歌やお雇い外国人の持ち込んだ曲から一般的な、いわゆる「文部省唱歌」が生まれ、日本軍の進駐と共にその日本の唱歌や軍歌が朝鮮半島・中国東北部・台湾・南方諸島等に広まっていったのである、と言うことかな。
 以前韓国に行ったとき、教会の頌栄(礼拝の終わりの神さまからの祝福を祈る時の賛美歌)のメロディーが「結んで開いて」だったので驚いたのだけれども、この本のように日本の唱歌の元が賛美歌だと言うことは、韓国の人たちが歌っているように、 「むすんでひらいて」は元々賛美歌だったのかもしれない(日本人だけ幼児の歌にしている)と考えさせられた本でもあった。

"コリア驚いた韓国から見たニッポン"

李元馥
(松田和夫・申明浩:訳)*
朝日出版社2001年6月
 原題「遠い国近い国 日本」で韓国で話題になった日本日本人論であるが、韓国の書籍で今までよくあった「日本=見習え」や「日本=最低!」と言った視点でなく、 主観的・客観的観点から何故日本は違うのか、どうして「島国根性」が生まれたのか、どうして奇跡的な経済発展を遂げたかなどをマンガで分かり易く、しかし押さえるところはちゃんと押さえながら (たとえば不良債権や経済のグローバル化にあえぐ日本経済を立て直す方法など)、日韓に根深く残る「天皇」「侵略」などにはさらりと触れて、同じように「おたく」「5人組」などにもさらりと触れている。

"ユダヤ歴史新聞"

ユダヤ歴史新聞編纂委員会*日本文芸者1999年4月
 歴史的文献がそろっているローマ以降以外は聖書からの引用も多く、ユダヤ人の視点に立っているようで、通常の「ユダヤ人関連本」にありがちな「ユダヤ教=密教」の書かれ方もされず 天地創造の始めから、モーセの出現、王国の南北分裂、「中間時代」の様子やローマなど他国との関わり合いなど、分かり易く書かれていて面白かった。 わたくしめのよく分からなかった「中間時代」からイエス誕生の前後のユダヤを取り巻く当時の世界の事が分かり易く、とてもためになったのだが、絶版で、出版社にもないらしい。
 

"園芸家12カ月"

カレル・チャペック
(小松太郎:訳)
中公文庫1975年12月刊
 宮脇俊三の「時刻表2万キロ」のラストに引用文があったのだけど、内容はユーモアあふれていて、園芸などやったことのないわたくしめが思わず植木鉢を買ってきてしまったほど。
<参考:「時刻表2万キロ」
 

"されば愛しきコールガールよ"他

私立探偵バーデューシリーズ
ロス・H・スペンサー
(田中融二:訳)
ハヤカワ文庫1983年7月刊
 どれも酒場の酔っぱらいの一言から始まる短い章と、よく分からないけど抱腹絶倒で軽妙なやりとりがたまらず、全5巻何も言わず買ってしまった。
 探偵物ではあるけど必ずしも主人公が探偵である必要はなく、ドタバタ喜劇というか、脂がのってた頃の筒井康隆チックに近い。
ただ、全て絶版らしい。
 

"20歳の原点"

高野悦子新潮文庫1979年5月刊
(新潮社1971年5月刊)
 わたくしめの人生を狂わせた書物その5である。たしか古本屋で見かけたとき、わたくしめもそれぐらいの歳だった。全共闘の時代に普通に生きていた彼女の日記。時代が全然違うけど、まっすぐに生きているところが、すっごく共感した。
 今では「新潮文庫の百冊」に入ってるけどね。
 

"ロゼアンナ"他

マルティン・ベックシリーズ
マイ・シューヴァル
ペール・ヴァールー
(高見浩:訳)
角川文庫1971年1月刊
 左罹った方たちはスウェーデンこそ高福祉国家、地上の楽園だって言いたげだけど、高福祉=高税金なわけで、働いたって税金に取られて手元に金が残らないから若者は働かず、犯罪の温床になっているわけで。 そういったスウェーデン社会のゆがみや、新しい警視庁ビルが立ち上がっていくと共にだんだんと官僚的で高圧的になっていく警察組織。そこに登場するのは時代遅れになりそうな、マルティン・ベック他職人気質の1級の刑事たち。 このスウェーデン社会そのものの10年間を追っかけた作品は、読み応え有り。全10冊
 

"マドロスはなぜ縞のシャツを着るのか"

飯島幸人論創社2000年2月
 商船大の教授にまでなった著者が、鳥羽商船高等専門学校長になったときに書いたエッセイ集。たとえば何故「海の日」は出来たとか、世界にある海峡の名前のいわれとか、カッターシャツの謂われとか、 とにかく前書きにあるとおり、「ぴりりと胡椒の効いた雑学でだべる」ための、一冊である(わたくしめの好きな分野)。特に明治丸に対しては思い出も深いようで。
 ちなみに、タイトルに関しては明確な答えが出ていない。

"おれがあいつであいつがおれで"

山中恒旺文社文庫1982年2月刊
 大林宣彦監督の尾道三部作のひとつ、「転校生」の原作本。しかし旺文社の「小6時代」に連載されたので、主人公は6年生。ストーリーは、まぁそういうことなんだけど、おもしろい。
 ちなみ旺文社は「旺文社文庫」なんてとっくのとうに止めているので、絶版である。(旺文社の児童書ハードカバーであるだけ)
 

"野ばら"

長野まゆみ河出書房新社1989年7月刊
 この本を読んでから、レトロチックな近未来を描いた長野ワールドにしばらく浸っていましたが、この作品が1番かなぁ。
 

"しずかにわたすこがねのゆびわ"

干刈あがた福武文庫1988年9月刊
(福武書店1986年1月刊)
 さまざまな女性の等身大な姿が機微に渡って描かれた、きれいだけど鋭い作品。「男は誰でも誘う」「話し相手とつきあいたい人は違う」とのこと。ふ〜む、女性心理とはそのような物か?。
 

"哀愁の街に霧が降るのだ"(上・中・下)

椎名誠情報センター出版局1981年11月刊(上)
1982年2月刊(中)
1982年11月刊(下)
 長い長い前書きと共に内容も3巻にも渡り(文庫本2巻)、椎名誠とその周辺に潜む、いわゆる「怪しい仲間」たちや、「本の雑誌」に係わる人達の色々が手に取れる、抱腹絶倒本。
 

"1980アイコ一六歳"

堀田あけみ河出書房新社1981年11月刊
 わたくしめの人生を狂わせた書物その3である。まぁ富田靖子の影響も有るんだろうけど、この「アイコ」の見ていた空が見たくて、名古屋まで来てしまったようなモノなわけで、下宿当時は色々な屋根に登っては名古屋の空を堪能して居ったわけで。。。当時は色々と鮮烈に考えさせられたモノだった。
 堀田あけみが性格悪くなったのは、名大の院のせいだろうか。わたくしめはそうは思わないけど。
 

"ジャパネスクの見方"

西岡文彦作品社1989年10月刊
 たとえば「借景」「おくゆかしい」や「あ・うん」の本来的意味など、日本人だから知っておいた方がいいのだけれども知らない事が、写真や図など頻繁に引用してあって、よく分かった。
 ちなみに今では誰でも口にするこの「ジャパネスク」は、この著者の造語です。
 

"ウルトラマン研究序説"

SUPER STRING
サーフラーダー21
中経出版1991年12月刊
 あの最後の怪獣ゼットンを倒すことの出来る武器を持つ科特隊は、憲法9条に違反しないのだろうかとか、ハヤタはウルトラマンの時に壊した建造物の賠償責任を負うのかとか、怪獣には権利がないのかとか、初代ウルトラマンを大学教授や専門家などがまじめに研究した本。
 この本が発売されたことにより、その後の「サザエ本」ブームが発生したのであるが、いわゆる「サザエ本」シリーズが、本編の内容のアラ探しばかりしてたり、文章力が痴出だったりしたのに比べると、さすがにその類の元祖だけあって、専門家が執筆したこともあり、読み応え充分。
 

"金鯱の夢"

清水義範集英社文庫1992年7月刊
(集英社1989年7月)
 氏の作品では一番好き!秀吉の嫡子秀正が名古屋に幕府を開き、江戸時代ならぬ名古屋時代が始まるという物。さてその名古屋時代とは?ちなみに明治維新は2通り有り。
 

"ガープの世界"(上・下)

ジョン・アーヴィング
(筒井正明:訳)
サンリオ文庫1985年5月刊
 戦時中から戦後、女性の自立、ウーマンリブの台頭、そして家族というモノの崩壊。戦後のアメリカの投影図的作品であり、且つ自伝的作品で面白かった。
 主人公の生い立ちもなにも全然違うけど、かの有名な映画「フォレストガンプ」が、この作品を元にして造られたという噂は、絶対本当だと思う。
 同タイトル映画も存在するが、この作品をモチーフにした物で、同じ物だと思わなければ充分面白いですよ。
 ちなみサンリオは「サンリオ文庫」なんてとっくのとうに止めているので、今は新潮か角川当たりから文庫が出てるはず。単行本はサンリオから。
 

"ワイルド・スワン"(上・下)

ユン・チアン(土屋京子:訳)講談社1993年1月刊
 日米そして中国が狂っていた時代、団塊の世代が大騒ぎをして何の結果も生み出せないばかりか破壊するだけ破壊して何の反省もしなかったあの時代、世の中をそのマンパワーで自分たちの思う通りに動かそうとした時代、そのわたくしめのよく分からなかった「文化大革命」時の著者の実体験を中心として、 その前の清代から日本占領下、国共内戦へと続く祖母や母親の体験など、中国の歴史の一端をのぞかせてくれる一大叙述詩的作品である。上下各400頁あまりと、かなり読み応え有り。
 出版された当時はちょうど改革開放政策の下、「文化大革命」に関する色々な作品が、映画「芙蓉鎮」辺りからちょとづつ、浸み出るように出始めた時代だった。
 

"重力が衰えるとき"

ジョージ・アレック・エフィンジャー
(浅倉久志:訳)
ハヤカワ文庫1989年9月刊
 世の中すべてがイスラム化された後の、そのイスラムと電脳世界の融合された近未来探偵の話。アラブ的であり、でもサイバーパンクであり、でもちゃんとハードボイルドしている。近未来物としては「アンドロイドは。。。」より、こっちの方が面白かった印象が。
<参考:「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」>
 

"おしまいの日"

新井素子新潮社1992年7月刊
 「少女小説」と言う物を確立した女氏の、何も事件が起きない、どう見てもただのよくある私生活なのだけど、サイコホラーに仕上がっていて、「ひとめあなたに」もそうだけど、こういう家庭物スリラーは、上手いなぁ。
 

"ノンちゃん雲に乗る"

石井桃子角川文庫1973年5月刊
 楽しい児童書。時代背景は古いけど、あの良き親子関係がまだどの家庭にも有ると思われていた頃の、優しさあふれる楽しい本だと思う。
 

"長女が読む本"

神津カンナ三笠書房1988年7月刊
 長女は優柔不断なのでなく、相手のことを色々考えてみると優柔不断に見える結果となってしまうとか、長女は一見面倒見が良さそうに見えるけど、実は今までしっかり面倒を見るように親からしつけられてきたのでそのように振る舞っているだけで、実は末の子の方が面倒見が良かったりと、 長女だからこそ分かる長女の性格を評論していて、結構ためになった。
 

"消えた魔球"

夏目房之介双葉社1991年8月刊
 子供だましの漫画からうまれた「魔球」は、消えたくなって、水原勇気の「ドリームボール」という、魔球の存在自体が消えかかった状態を過ぎ、「ドカベン」という魔球を必要としないところから「タッチ」という魔球とは縁もゆかりもないラブコメ路線まで進んでいった、と言うのが著者の主論、かしらん。
 それらの野球漫画の他、「あしたのジョー」やスポコン漫画、「バタアシ金魚」まで、「ナンバー」連載エッセイと言うことで、著者の持論を含めスポーツ漫画を色々と取り上げている。
 

"論語知らずの論語読み"

阿川弘之講談社文庫1981年6月刊
 「犬棒かるた」じゃなく、論語の話。論語の有名無名な一節一説を取り上げ、自らの解釈を取って付けたエッセイ集。取っ掛かり難い論語の入門にはいいかも。
 

"体でっかち"

野田秀樹マガジンハウス1988年12月刊
 野田秀樹がまだ1度目の結婚もせず、「夢の遊民社」で名を挙げていた、まさに絶頂期の頃に、雑誌ターザンに連載されていた物をまとめた本。「北尾」と瀬古と南海ホークスに異常な愛情を注ぐその姿は、いじらしいと言えるかも。
 

"エロティシズム"

フランチェスコ・アルベローニ
(泉典子:訳)
中央公論社1991年10月刊
 帯にある通りに世界的ベストセラーかはともかく、男性の望む女性像、女性の望む男性像が、妄想段階やエロ雑誌、ハーレクインなどから紹介されていて、当時未婚のわたくしめはなるほどと思いました。
<参考:「スカートの下の劇場」>
 

"水原勇気0勝3敗11S"

豊福きこう情報センター出版局1992年6月刊
 いわゆる「サザエ本」ブームの頃の本。表記水原勇気の他、明訓高校、巨人の星、矢吹ジョー、タイガーマスクなどを、漫画本に記載されていることのみから類推して検証している本。
 はっきり言って文章が下手なため、読んでいると疲れるが、斜め読みするつもりでデータを拾って行くと良いと思う。
 

"ガリバー旅行記"

ジョナサン・スウィフト
(梅田昌志朗:訳)
旺文社文庫1976年6月刊
 ガリバーが日本に来たとは知らんかった。解説によるとスウィフトはその後、ガリバーのように人から離れた生活を送ったらしい。